特別支給の老齢厚生年金とは65歳になる前にもらえる老齢厚生年金のこと。
自分で申請して受給年齢を早める”年金の繰上げ受給”とは違うのがポイントです。
なので「繰上げして年金額を減らしたくないから受け取らない」と勘違いしていると、損してしまうので気をつけましょう。
▶もらえる金額は?
特別支給の老齢厚生年金としてもらえる金額は、厚生年金に加入していた期間と報酬(勤務先の月収やボーナス)によって決まります。したがって、厚生年金に加入していた期間が長いほど、かつ、その期間の収入が多いほど、もらえる金額が多くなります。
具体的には「報酬比例部分」と「定額部分」の合計となります。
※昭和31年4月2日以後生まれの定額部分は 1,701円 × 被保険者期間の月数(上限は480月)
※ただし、これから受け取る方は「定額部分」はありません(特例の場合を除く。くわしくは下記の「対象者は?」を参照)。
具体的な金額は”ねんきん定期便”に書いてあるので、自分のをみて確認してみましょう。
※マイナポータルから「ねんきんネット」にアクセスして年金見込額をいつでも見ることも可能です。
※参照:日本年金機構定額部分
「特別支給の老齢厚生年金」をもらうには下記の要件を満たしている必要があります。
※参照:日本年金機構特別支給の老齢厚生年金
全員が同じ年齢から支給されるわけではありません。
男性なら生年月日が昭和16年4月1日以前のひと(女性なら昭和21年4月1日以降)の場合、「報酬比例部分」と「定額部分」が60歳から支給されます。
生年月日がこれ以降になると、支給開始年齢が1年ずつ後ろ倒しになり、昭和24年4月2日以降(女性ならが昭和29年4月2日以降)は「定額部分」が支給されなくなります。
そして、昭和36年4月2日以降(女性ならが昭和41年4月2日以降)は、「特別支給の老齢厚生年金」は支給されなくなります。
※特例を除く。
※参照:日本年金機構特別支給の老齢厚生年金
※1 申出月の翌月分から特例受給開始となります。ただし、障害年金を受給中の方については報酬比例部分の受給開始年齢にさかのぼって特例受給開始となります。
※2 昭和21年4月1日以前に生まれた方は55歳から受給できますが、それ以後に生まれた方については受給開始年齢が段階的に引き上げられます。
▶65歳になる前から加給年金がもらえる?
加給年金は本人が65歳以上で「加給年金の対象者(子や配偶者)」がいる場合に支給されるものですが、上記の特例にあてはまるひとは、65歳になる前でも加給年金を受け取ることができます。
※ちなみに、加給年金を受け取ることができるのは、退職等で厚生年金保険の被保険者資格を失った月の翌月分からです。
※加給年金をもらうには、「加給年金額加算開始事由該当届」の提出が必要になります。
※参照:日本年金機構特別支給の老齢厚生年金
▶注意点
特例により定額部分が発生した後に、厚生年金保険に加入し被保険者となった場合、定額部分(加給年金額を含む)の支払いは停止するので注意しましょう。
特別支給の老齢厚生年金をもらえるひとは事前にお知らせが届きます。ただし、自動的に支給が始まるわけではありません。受給の申請が必要になります。
▶事前に連絡が来る?
受給が開始する年齢の3ヶ月前に「年金請求書(事前送付用)」が日本年金機構から送られてきます。請求書にあなたの名前などを記入し、提出すると受給できるようになります。
▶時効に注意?
特別支給の老齢厚生年金を受け取る申請をしないでそのままにして5年が過ぎると、年金の請求をしても受け取れなくなります。
特別支給の老齢厚生年金には「繰下げ制度」はありません。受給開始年齢が来たらすぐに受給の申請をしましょう。
ただし、早くもらう「繰上げ受給」は可能です。
特別支給の老齢厚生年金をもらえるひとの老齢厚生年金の減額率は、「特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢に達する日の前月まで」の月数で計算します。
※たとえば特別支給の老齢厚生年金が63歳から開始、老齢基礎年金が65歳から開始の場合で「老齢年金を60歳に繰上げするとき」
↓
老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給額は本来の金額の85.6%に減額されます(65歳以降の老齢厚生年金の受給額も85.6%に減額されます)。
老齢基礎年金は本来の金額の76%に減額されます。
※繰上げ受給をした場合、繰上げの取り消しはできません。
※繰上げ受給をすると、特例措置を受けることができなくなります。
※そのほか注意点は繰上げ・繰下げ受給の注意点を参照。
65歳になる前に退職して失業保険(基本手当)を受ける場合、65歳になる前に支給される老齢厚生年金と同時に受けることができません。
したがって、退職後に雇用保険の失業等給付を受けようと考えている方は注意しましょう。
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※高年齢雇用継続給付を受ける場合は、在職による年金の支給停止に加えて年金の一部が支給停止されます。
※参照:日本年金機構年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整
年金をもらいながら働いて給料をもらうのは違反ではありません。
年金がもらえる年齢になってからもサラリーマンなどとして会社で働きながら厚生年金保険に加入してもOKです。
※厚生年金に加入している期間が長ければ老後の年金も増えるので、60歳以降も働く方は年金が多くもらえます。
ただし、稼いだ金額などによっては老後にもらえる厚生年金が「一部停止または全額支給停止」になるときがあります。
これを在職老齢年金といいます。いくらまでなら減額されないのか簡単に説明すると、60歳以上で「賃金と支給される厚生年金の月額の合計」が50万円を超えなければ年金が減ることはありません。
※2024年度に50万円に変更。2023年度は48万円でした。
60歳以降もたくさん給料をもらうことによって老後の年金が全額支給停止される場合には加給年金も一緒に停止するので注意しましょう。