更新日:2024年1月7日

2023年10月からの年収の壁はどう見直しされた?106万の壁と130万の壁

106万の壁および130万の壁についての対応が見直しされました。ここでは従業員側が気をつけるポイントについて説明していきます。
※60歳以上または障害厚生年金がもらえる程度の障害をもつ場合は180万円。
▶いつから始まる?
2023年10月から年収の壁への対応の見直しが始まります。年収の壁が撤廃されるわけではありませんが、一時的な措置が行われます。内容はどうなるのかくわしくは下記で説明していきます。
この記事のポイント(要点まとめ)


▶106万の壁は何が変わったの?
106万の壁を超えて社会保険に加入しても、手取りが減らないようにしてくれる。
※くわしくは下記で説明しています。


▶130万の壁は何が変わったの?
一時的な理由なら、130万円の壁を超えたとしても社会保険の扶養に入ったままでいられるようになった。
※くわしくは下記で説明しています。
※60歳以上または障害厚生年金がもらえる程度の障害をもつ場合は180万円。


▶子供の扶養とかの「103万の壁」は変わってないの?
これについては10月からも変更はありません。
※くわしくは下記で説明しています。

動画でザッと内容を把握したいひと


106万の壁の変更ポイントについて


月収8.8万以上(年収にすると106万)になると、勤務先の社会保険に加入することになります。
※学生以外で、勤務先が特定適用事業所である場合。
※くわしい加入条件は月収8.8万円以上だと勤務時間が短くても加入する?を参照。


ただし、加入しても従業員の手取りが減らないように、賃金を増やしたり、勤務先から手当として支給金がもらえるようになります。
支給される金額は従業員が支払うことになる社会保険料相当の金額。
※手当の対象は標準報酬月額10.4万円以下(月収で10.7万円未満)の従業員。
新たに社会保険に加入することになった労働者が対象です。
※ただし、手当はずっともらえるわけではない(最大2年間の措置)。


何が変わるの?
年収106万未満で社会保険の扶養に入っていれば、手取りはほとんど減らずに済んでいました。しかし、年収106万(月収8.8万以上)で勤務先の社会保険に加入すれば、社会保険料を支払うことになるため、手取りがガクッと減ってしまいます。
※社会保険に加入する前と加入後の「手取りの差」が15万円くらい出てしまう(下記のグラフを参照)。

この問題に対応するために、年収106万円を超えても手取りが減らないように、企業側が従業員に社会保険料相当の金額を支給したり、従業員の賃金を増やしたりします。


▼手取りのグラフを解説

Aパターン:130万未満は社会保険の扶養になっている場合の手取り

Bパターン:130万未満でも社会保険に加入した場合の手取り

社会保険の扶養と社会保険に加入したときの手取りグラフ
社会保険の扶養と社会保険に加入したときの手取りグラフ

※40歳未満・夫が社会保険に加入している・パート主婦として計算。
※おすすめ記事:パート主婦は年収いくらがお得なの?103~150万円



106万の壁が変わった目的は?
この施策は、今まで働く時間を抑えていた方のキャリアアップを狙ったものです。一定期間(1年~3年)手当等を支給することで、今後もっと働く時間を増やしてキャリアアップを目指してもらい、最終的に年収の壁を気にせず働いてもらえる環境をつくることを目的としています。

注意ポイント

勤務先(事業主)がこの施策に対応していないといけません。施策が始まったばかりの時は、企業側がおこなう手続きなどで現場はあたふたすると思うので、あまり焦らないように心の準備をしておきましょう。
※取り組んだ企業へは、1人あたり最大50万円(1年目20万円,2年目30万など)助成される。この助成金を利用して、従業員の手取りが減らないように賃金を増やしたり、手当を支給したりする。

▶みんな手当がもらえるの?
※手当の対象は、新たに社会保険に加入することになった従業員で、かつ、標準報酬月額10.4万円以下(月収で10.7万円未満)の従業員。

※参照:厚生労働省年収の壁・支援強化パッケージについて

つづいて、年収130万の壁がどう変わるのかについて下記で説明していきます。

130万の壁の変更ポイントについて


今までは何が問題だったの?
たとえばあなたがパートをしている主婦で、特定適用事業所ではない勤務先で働いており、月収が毎月10万円であれば、年収は120万なので、配偶者の社会保険の扶養を外れないままでいられます。
社会保険の加入条件を満たしていない場合。

しかし、年末などの繁忙期(10月~12月)などで一時的にシフトが増えてしまい、働く時間が増え、その結果、年収が130万円以上(135万や140万~など)になってしまうと、社会保険の扶養でいられなくなってしまいます。

したがって、扶養から外れたくないひとは年末時期に働く時間を減らしてしまうケースが多くみられます。

何が変わるの?


これを防ぐために、繁忙期などの一時的な理由で収入が増えて130万円以上になってしまう場合は「社会保険の扶養のまま」でいられるようになりました。

ただし、あくまでも「一時的な事情」として認定を行うことから、この施策が適用されるのは、原則2回まで(連続2年まで)が上限となります。つまり、3年目も同様な条件で130万円以上になる場合は対象外となりそうです。



主婦以外も対象?
社会保険の扶養に入っている方が対象なので、学生や両親、60歳以上の親族も上記の施策が適用されます。
※60歳以上または障害厚生年金がもらえる程度の障害をもつ場合は「年間収入180万円未満」が社会保険の扶養でいられる条件になりますが、これについても同様に、一時的な理由で180万以上になる場合は今回の施策が適用されます。
※参照:日本年金機構事業主の証明による被扶養者認定Q&A
社会保険の扶養については←こちらの記事で解説。



事業主の証明が必要?

130万以上になっても社会保険の扶養でいるためには証明が必要になります。
保険組合は、社会保険の扶養内であるかどうか定期的に収入の確認をします。その際に、”一時的に収入が増えたことの証明”を提出しなければいけません。ちなみに、証明は勤務先の事業主から受け取ることになります。
※証明書は下記のリンクの最後にあります。
※参照:日本年金機構事業主の証明による被扶養者認定Q&A



注意ポイント

厚生労働省の資料によると、普段は扶養内(毎月10万円以下など)で働いている人が”一時的な理由”で130万以上になってしまう場合は社会保険の扶養でいられるということです。「毎月25万稼いで社会保険の扶養に入りながら年収300万だ!」とはならないので注意しましょう。

※参照:厚生労働省年収の壁・支援強化パッケージについて
※参照:日本年金機構事業主の証明による被扶養者認定Q&A
※おすすめ:妻が扶養から外れるといくらかかる?夫の税金はいくら増える?

103万の壁は変わったの?
103万の壁とは税法上の扶養(扶養親族)でいられる収入のボーダーラインです。

残念ながら、これについては10月からも変更はありません。

たとえば子供がアルバイトをしていて、年収が103万円を超えてしまえば、扶養親族の対象外となってしまうので親の税金が増えてしまいます。
※くわしくは下記の記事で解説しています。
フリーターや16才以上の学生が扶養から外れるといくらかかる?
年収の壁とは?アルバイトの103万~201万の壁を解説