夫が65歳の会社員で妻が50代の場合に気をつけること。

2024.11.24 更新
夫が65歳の会社員で妻が50代である場合、妻が扶養から外れてしまうことを知っているひとは少ないと思います。夫が65歳になるタイミングでいろいろと注意しなきゃいけないことについてわかりやすく説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶夫が65歳になると何が問題なの?
夫が65歳になると第2号被保険者じゃなくなる。なので、妻が50代なら国民年金約20万円を支払わなければいけなくなる。
※くわしくは下記で説明しています。


▶夫が65歳になると加給年金がもらえる?
夫が65歳時点で条件を満たしていれば加給年金がもらえる。上乗せされる年金は約41万円。
※くわしくは下記で説明しています。


▶夫が妻の国民年金20万を払うほうがお得?
妻のかわりに夫が国民年金20万を支払えば控除が使えるので税金が安くなる。
※くわしくは下記で説明しています。


▶夫が65歳なら妻はパート先で社会保険に加入するほうがお得?
年収によってはパート先で社会保険に加入したほうが保険料が安く済む。ただし、場合によっては加給年金がもらえなくなるので注意。
※くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次
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夫が65歳になると妻は扶養から外れる?

現在、65歳を超えてもバリバリ働くひとが増えていますが、夫と妻で年がそこそこ離れている場合、妻が扶養から外れてしまうことがあります。

どんなときかというと、夫が会社員で社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しており、妻がその扶養に入っている場合です。

夫が65歳になると扶養(主婦年金)の対象外になる?

夫が会社員で社会保険に加入しており、妻がその扶養に入っていれば妻が支払う国民年金の保険料は0円になります。
※この優遇を受けている配偶者のことを国民年金の第3号被保険者といいます。主婦年金とよばれたりもしています。

しかし、夫が65歳になると妻は第3号被保険者の対象から外れてしまうのです。

なぜかというと、夫が65歳になると厚生年金には加入している状態ではありますが、夫は第2号被保険者ではなくなるからです。

※参照:日本年金機構HP国民年金の「第1号被保険者」、「第3号被保険者」とは何ですか。

▶どういうこと?

第3号被保険者(主婦年金)は、第2号被保険者に扶養されている配偶者のことをいいます。

したがって、夫が65歳になって第2号被保険者に該当しなくなると妻が第3号被保険者でいられる条件を満たさなくなるので、妻は第3号被保険者の資格を喪失することになるんです。

※健康保険の扶養からは外れません。扶養内であれば妻の健康保険料は0円のままです。

第3号被保険者でなくなった妻は、第1号被保険者に変更(国民年金の加入手続き)をしなければいけません(種別が変わるため)。
※加入手続きは役所にて行いましょう(マイナポータルならいつでも電子申請が可能です)。
※日本年金機構電子申請(マイナポータル)


こうなると、残念ながら妻は国民年金の保険料の支払いをしなければいけなくなってしまいます。

※国民年金の保険料は約20万円(月額約1.7万円/2024年度)。

夫が65歳になると加給年金がもらえる?

年の差がある夫婦は上記の出費を埋めるような嬉しい制度「加給年金」があります。

夫が65歳から受け取る老齢年金に、加給年金が上乗せされます。加給年金として上乗せされる金額は1年間で約41万円です。

以下の条件をすべて満たすと加給年金が支給されます。

配偶者の加給年金がもらえる条件

  • あなたが厚生年金に加入していた期間が20年以上あること。
    ※または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15~19年あること。

  • あなたが65歳以降(または定額部分支給開始年齢に到達以降)で、生計を維持している配偶者がいる。
    ※配偶者は65歳未満であること

  • 配偶者の年収が850万円未満(所得655万5千円未満)であること。

※参照:日本年金機構HP加給年金額と振替加算

妻に厚生年金の加入期間があるとダメ?

共働きをしており、配偶者(たとえば妻)が働いている場合でも、上記の条件を満たしていれば加給年金は支給されます。
※配偶者(たとえば妻)の年収が850万円未満(所得655万5千円未満)なら働いてお金を稼いでいても加給年金の対象となります。

ただし、下記のいずれかにあてはまる場合は夫の加給年金がストップされます。

▶加給年金が止まる場合

・妻の厚生年金の加入期間が20年以上になったとき。

・妻の厚生年金の加入期間が35歳以降で15年以上になったとき。

※男性の場合は40歳以降で15年以上。
※加給年金をもらうには申請が必要です。そのほか加給年金についてくわしくは加給年金とはを参照。

では次に、夫が加給年金をもらったとき税金はどうなるのか下記で説明していきます。金額をシミュレーションしています。

夫の税金はどうなる?

妻が第3号被保険者じゃなくなったとしても夫の税金が増えたり減ったりすることはありません。

ただし、65歳になったことで加給年金が支給されて収入が増えれば、税金も上乗せされます。

では、夫が65歳以上で会社員という条件で金額をシミュレーションしてみましょう。

65歳になった夫の税金はいくら増える?
【シミュレーションの条件】

たとえば夫が65歳以上で勤務先の年収が400万、老齢年金収入が200万、支払った社会保険料72万、配偶者控除を利用の場合。

▶加給年金が無いとき
このとき、夫にかかる税金は1年間で約31.3万円となります。


▶加給年金41万をもらったとき
このとき、夫にかかる税金は1年間で約39.6万円となります。
※加給年金約41万円が加わったとすると夫の老齢年金収入は1年間で241万円となります。
※配偶者の加給年金として支給される金額は年間約41万円です。くわしくは加給年金とはを参照。

つまりどういうこと?

つまり、加給年金をもらうことで約8万円の税金が上乗せされることになります。
※計算は年金税金シミュレーションで行いました。

夫が65歳で妻が50代のとき、手続きをすれば夫の税金が安くなります。どんな手続きかというと、社会保険料控除を利用する手続きです。くわしくは下記で説明していきます。
※「夫が妻の年金を支払う」のがポイントです。


夫が妻の年金を払えば税金が安くなる?

夫が65歳になり、妻に国民年金の支払いが発生した場合、夫にかかる税金をもっと安くする方法もあります。

それは、妻が支払う国民年金の保険料を夫が支払う方法です。

妻の国民年金の保険料を夫が支払うことで夫は社会保険料控除を利用することができます。
※社会保険料控除とは、支払った社会保険料のぶんだけ所得が控除されるものです(社会保険料には国民年金などが含まれる)。

では、妻の国民年金を支払った場合と支払わなかった場合でシミュレーションしてみましょう。
※条件はさきほどと同じ場合で計算していきます。

65歳になった夫の税金はいくら増える?
【シミュレーションの条件】

たとえば夫が65歳以上で勤務先の年収が400万、老齢年金収入が200万、支払った社会保険料72万、配偶者控除を利用の場合。

▶夫が妻の国民年金を支払わない場合
このとき、夫にかかる税金は1年間で約39.6万円となります。


▶夫が妻の国民年金20万円を支払った場合
このとき、夫にかかる税金は1年間で約35.6万円となります。

つまりどういうこと?

夫が妻の代わりに約20万円の国民年金保険料を支払ったとすると、夫の税金は約4万円安くなります。
※もし、夫が妻の国民年金をかわりに支払うのであれば社会保険料控除を利用するのを忘れないようにしましょう。
※計算は年金税金シミュレーションで行いました。

夫が妻の国民年金を代わりに支払ったとき、社会保険料控除を利用するには申請が必要になります。といっても申請方法はむずかしくないので安心してください。
※支払った金額を年末調整または確定申告の際に入力するだけです。

申請には控除証明書の添付が必要になります。

※控除証明書は日本年金機構から今年11月頃または翌年2月頃に送られてきます。くわしくは国民年金を支払ったら控除の対象?を参照。
※申請方法については年末調整・確定申告での社会保険料控除の申請は?を参照。


妻がパートをしているなら社会保険に加入したほうがいい?

夫が65歳になったのを機に、妻がパート先で社会保険に加入しようと考える方もいるでしょう。

というのも年収によってはパート先で社会保険に加入したほうが安く済むからです。

※夫が会社独自の福利厚生扶養手当や家族手当)などをもらっている場合、妻の年収によっては手当が支給されなくなることがあるので確認しておきましょう。
※夫の会社によっては、配偶者がいると年間12万円くらい手当がもらえます。


パート先の社会保険料のほうが安い?

国民年金の保険料が1年間で約20万なのに対し、社会保険料はパート先の収入によって以下のように金額が変わります。


▶国民年金の保険料
1年間で約20万円
※夫が社会保険料控除を利用して税金が約4万安くなる場合、実質約16万円


▶パート先の社会保険料
たとえば、パート先の月収が8.8万円(年収約106万)なら社会保険料は約15万円になります。
※したがって、年収によってはパート先で社会保険に加入したほうが保険料が安くなります。


年収 社会保険料
※健康保険と厚生年金の合計額
年収106万円のとき 1年間で約15万円です。
※月額約13,000円
年収115万円のとき 1年間で約17万円です。
※月額約14,000円
年収130万円のとき 1年間で約19万円です。
※月額約16,000円
年収150万円のとき 1年間で約21万円です。
※月額約18,000円

※保険料は税金社会保険料シミュレーションで計算。

また、厚生年金に加入して保険料を払えば、妻が老後にもらう年金額も増加します。

パートで妻の年金はいくら増える?
厚生年金に加入したときに増える金額(老齢年金)は以下のとおりです。

※下記表は老齢年金(基礎年金と厚生年金の合計)の金額です。
※あくまで大まかな計算です。

※保険料と老後の年金額が現在と同じと仮定した場合。
※月給の平均は、厳密には標準報酬月額のこと。ボーナスは無しとして計算。

パート先で社会保険に加入したほうがいいの?
今まで夫の扶養に入っていたが、夫が65歳になったのを機に「パートで働く時間を増やしたい人」または「あらたにパートを始めたい人」はパート先で社会保険に加入したほうがいいかもしれません。

あまり働く時間を増やしたくない人や、そもそも働きたくない人は、無理してパート先で社会保険に加入する必要はありません。
※夫の健康保険の扶養に入ったままでいましょう。妻が支払う国民年金は夫に支払ってもらい、夫は社会保険料控除を利用しましょう(上記の説明を参照)。

注意ポイント:加給年金が止まる?

妻の厚生年金の加入期間が20年以上 または妻が35歳以降に厚生年金の加入期間が15年以上になったとき夫の加給年金が支給停止してしまいます。

▶加給年金が止まる場合

・妻の厚生年金の加入期間が20年以上になったとき。

・妻の厚生年金の加入期間が35歳以降で15年以上になったとき。

※男性の場合は40歳以降で15年以上。
※加給年金をもらうには申請が必要です。そのほか加給年金についてくわしくは加給年金とはを参照。


この場合は社会保険に加入しないほうがいい?
もし、妻の厚生年金の加入期間がもうちょっとで上記にあてはまるようであればパート先で社会保険に加入しないようにすることをおすすめします。
※もともと加給年金の対象外であれば関係ありません。
※また、妻が65歳以上になれば加給年金は対象外になるので、65歳以降になったらパート先で社会保険に加入しても加給年金には関係ありません。