社会保障制度のなかでも中心的な制度である社会保険をつくったのは19世紀ドイツのビスマルクだといわれています。
当時は産業革命で、すごい勢いで社会が変化していく時代でした。この産業革命がきっかけで誕生したのが社会保障制度といわれています。
では、このときなぜ社会保障制度が必要になったのでしょうか。
産業革命によって、そのころの社会がどのように変化したのか、社会保障制度がなければいけないような状況になった経緯について下記で説明していきます。
産業革命で経済はすごい勢いで成長しました。
工場では労働者の不足をおぎなうために今まで農村で働いていた人達を都市へもっていき、社会が大きく変化していきました。
それと同時にさまざまな問題が発生しました。
農民はもともといた農村の暮らしから引き離され、わずかな賃金で過酷な労働を強いられるようになり、貧困に苦しむようになりました。
そのとき資本家は労働者を生産手段としか考えておらず、資本家と労働者での格差はおおきくなり、お金は資本家に集中していきました。
すると、格差の拡大・大量の貧困労働者による治安の悪化・衛生の悪化などの問題が発生してしまったのです。
高齢になったりケガや病気をしたときに何も助けがない状態では社会は安定しません。
この問題に対処するために生まれたのが社会保障制度なんです。
日本では今の社会保障制度の基礎がつくられたのは1961年になってからです。
健康保険や労災保険のような制度は以前からありました。しかし、「国民のすべてが医療保険(健康保険など)に加入する」「すべての20歳以上60歳未満の方は国民年金に加入する」といった社会保障制度の基礎がつくられたのは1961年になってからです(国民皆保険・皆年金制度)。
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このときの日本はまだそれほど豊かな国ではありませんでした。
ですが、社会保障制度があったことにより、大きな所得格差をつくらずに高度経済成長の波にのりました。
※「病気やケガをして働けなくなったらさようなら」というような不安定な社会にさせずに成長しました。
その結果、日本の経済を大きく成長させたのです。
ここまで説明したように、一人ひとりの人生を大切に扱わなければ貧困や格差などの問題がおこり、最後には社会全体がくずれてしまいます。
産業革命で経済成長をしたドイツは上記の問題が大きくなったことで社会保障制度を生み出しました。
社会保障制度によって人々の生活を支え、障害を負ったり病気やケガをしてもまた復帰できるような社会にし、だれもが参加できる社会をつくることで経済が発展していくのです。
※社会保障制度が格差や貧困の大量発生を防いでいるとはいえ、経済格差などの問題は世界各国で話題になっています(欧米諸国の格差が目立っています)。制度の内容は世界中一緒ではありません(たとえば日本では患者側が負担する医療費は1割~3割の値段で済んでいますが、これは世界中で同じわけではありません)。
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※学生向けの教科書(保険など)については税金や保険を学ぼうを参照。
※参考文献:横山和彦, 田多英範, 日本社会保障の歴史, 1991年